製造工程

琉球の漆器

1 伐採

琉球の漆器は「デイゴ」や「シタマキ(エゴノキ)」「センダン」と呼ばれる木材が多く使われ、制作する作品の大きさなどにより使い分けている。 「デイゴ」の木に関しては、昔は職人自ら制作する作品にあわせて枝を落とし必要な長さで切ってきていました。 また「シタマキ」は伐採する時期も大事で昔から冬場に伐採したものを使用しております。

2 乾燥

1年から5年の歳月をかけてじっくりと乾燥させます。乾燥がきちんとできていないと作品にした後木材の縮みなどにより変形やひび割れの原因となってしまうためです。 また琉球の漆器で使われる「デイゴ」や「エゴ」の木は乾燥に強く長い間使用しても変形やひび割れが少ないのも特徴です。

3 製材

製作する作品に合わせ、乾燥させた木材を切り分ける。
東道盆・喰籠などの大きいものは主にデイゴの木、椀などは主にシタマキを利用します。

4 粗挽き

ロクロに充分に乾燥させた木を取り付け、作品の形に整形する。
その時に使用するのはノミのようなもので、削る角度や場所などにあわせて職人自らが作ったオリジナルの工具です。 また同じものを複数作る時などにも使用している手作りの採寸する道具もあります。



5 仕上げ挽き

ある程度の形まで削り形を整えたら、サンドペーパーなどを用いて表面の凹凸を取ったり細かい部分の修正をして仕上げます。

刻苧(こくそう)彫り 木の節や年輪などで割れたり変形しそうな部分をあらかじめくりぬいたり削っておく工程。
刻苧漆埋め 刻苧彫りで削ったりくりぬいた部分にデイゴの木粉や漆などを混ぜた独自の刻苧漆と呼ばれるもので埋め乾燥させる。 (パテ埋めのようなこと)
目摺り研ぎ 刻苧漆埋めをしたのも下地を塗る前に成型をする工程
この後下地付けの前に、作品によってはそこの部分やふちの部分が薄かったりして弱く割れやすいものには「布着せ」という工程で 布やわしなどを貼り補強をすることもあります。

6 下地づけ

最終的に表からは見えない部分ですが重要なのがこの下地付けで、丁寧に乾燥させた木材に下地を付け、時間をかけてゆっくりと乾燥させることで その漆器自体の変形やひび割れなどを防ぐ役目がある。

7 研磨

下地づけをしたものを砥石などで研ぎ表面の凹凸をなくし整形していく。

「下地づけ」と「研磨」は1度ではなく3度、作品によってはそれ以上の回数と時間をかけて丁寧に仕上げる。
また研磨をする場合も素材や回数に応じて目の粗さの違うものを使用している。 一度下地をつけたものは数週間(季節によって異なる)じっくりと乾燥させ、研磨をする。
全て職人の経験とカンをもとに行いますが、作品によっては下地付けが完了するまでに半年から一年以上かかるものもあります。

8 中塗り

仕上げ塗りをする前に細かい穴や傷などを埋め、上塗りがきれいに塗れて密着するように塗ります。 作品に応じて黒や朱などを使い分けます。
たとえ仕上げの前の色付けとはいえ、ここでの色の付き方で仕上げの色も変わってくるのでその日の湿度や気温にあわせて 塗る漆の配合を変え、乾燥するときも湿度などを考慮しながら調整してじっくりと乾燥させます。

9 研磨

上塗りの前の最後の研磨です。仕上げのできにかかわる作業ですので細かく一つ一つ目と手で確認しながら研ぎあげていきます。

10 上塗り

どんなに下地が良くできていても、直接目に映り作品の良し悪しを判断する部分ですので最も緊張する部分です。
塗る時の季節や気温や天候により、もっとも美しく映える色にするため長年の経験と伝統、職人のカンによって塗る漆の配合を変え 一つ一つ丁寧に塗ります。
最後には細かなホコリや気泡などを細い針のようなもので取り乾燥させる。天候の変わりやすい沖縄では 午前中は晴れていても突然大雨になることもよくあり、湿度の変化は大敵であるため、職人の経験やカンが頼りな部分もある。
また、上塗りをした後も漆がある程度乾燥するまでは垂れてくるので、上下を返しながら垂れない状態を保つことも重要です。
漆は乾燥しているより湿度が高い方が固まるのですが、あまり湿度が高すぎても色が黒ずんだり縮んだりしてしまうためきれいな色になりません。 上下を返すのと同時にその湿度も管理するために今なお全て手作業で返しの作業を行っています。 冬場など乾燥している時期には乾燥保管しているところに水をまいたりして調整することもあります。

11 加飾

塗りあがったものに様々な技法により「絵付け」を行います。 琉球漆器の主な技法としては「堆錦」「螺鈿」などが有名で、そのほかにも「沈金」「蒔絵」「漆絵」などの方法で絵や模様をつけていきます。